2008年05月03日
ダブルマチュワード-Port6
第三章 Third Order サード・オーダー
「ごちそうさまでした。実は今から、彼と会うんです。ちゃんと話すつもり。
今のところロンドンに行く方向で。」
「そうなんですね。寂しくなりますけど、1年なんて、すぐですよ。」
遠藤さんは、優しく微笑んで見送ってくれた。
通りは、さっきより数段冷たくなっていた。
22時28分発の私を乗せた地下鉄は、銀座に心を置き去りにしたまま、
淡々と、1秒の狂いも無く、冷静に進んでいるように思えた。
階段を昇って外へ出ると、金曜日の六本木には雪が舞っていた。
粉のように小さく、今にも消えてしまいそうな雪が、
きらびやかな東京の夜に落ちてくる。
人ごみを避けるようにして、左手に六本木ヒルズを見ながら西麻布まで歩く。
ジュエル・ロブションのランチは、二人のお気に入りだった。
日曜日に休みが合うと、昼間からシャンパーニュを楽しんだ。
2階のバーでは、びっくりするほどの大きなグラスで出てくるマティーニを、
ニューヨーカー気取りで、笑いながら飲んだ。
彼が、ドキドキするような葉巻やカルヴァドスを教えてくれたのも、そのバーだった。
ティファニーではよく、シルバーをねだった。
彼は記念日にうとい。大抵の男の人はそうなのかもしれないし、特に不満に思ったことも無いけど
彼を強引に誘って、「何月何日は何の日だから、これ買って。」と、わがままを言ったりもした。
去年の私の誕生日は、彼はイタリア、私はアメリカという長い距離を隔てて迎えた。
「お互い、仕事だから、しょうがないね。」
そう穏やかに言える彼が、頼もしくもあり、寂しくもあった。
ショコラのお店では、彼があまりにも入念に、私以外の女性へのバレンタインのお返しを
選ぶことに機嫌を損ねて、そのまま一人で帰ってしまったこともあった。
つい最近、ミシュランの一つ星をとったお蕎麦屋さんにも、行かなきゃねと
話していたけど、二人の毎日はそれぞれに忙しく、
もうしばらくの間、デートらしいデートをしていない。
何故か全てが過去形になる。
これからのことが、見えてこない。
私は、彼にとって、どういう存在なんだろう。
彼は、私にとって、どういう存在なんだろう。
いろいろなことを考えながら、雪の舞う六本木を7・8分歩く。
西麻布の交差点から少し脇に入ると、控えめな看板が見えてくる。
ゆっくりと扉を開ける。
そこはエンドスケープ、「最後に見た風景」という意味を持つ、二人にとって思い出のバー。
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「ごちそうさまでした。実は今から、彼と会うんです。ちゃんと話すつもり。
今のところロンドンに行く方向で。」
「そうなんですね。寂しくなりますけど、1年なんて、すぐですよ。」
遠藤さんは、優しく微笑んで見送ってくれた。
通りは、さっきより数段冷たくなっていた。
22時28分発の私を乗せた地下鉄は、銀座に心を置き去りにしたまま、
淡々と、1秒の狂いも無く、冷静に進んでいるように思えた。
階段を昇って外へ出ると、金曜日の六本木には雪が舞っていた。
粉のように小さく、今にも消えてしまいそうな雪が、
きらびやかな東京の夜に落ちてくる。
人ごみを避けるようにして、左手に六本木ヒルズを見ながら西麻布まで歩く。
ジュエル・ロブションのランチは、二人のお気に入りだった。
日曜日に休みが合うと、昼間からシャンパーニュを楽しんだ。
2階のバーでは、びっくりするほどの大きなグラスで出てくるマティーニを、
ニューヨーカー気取りで、笑いながら飲んだ。
彼が、ドキドキするような葉巻やカルヴァドスを教えてくれたのも、そのバーだった。
ティファニーではよく、シルバーをねだった。
彼は記念日にうとい。大抵の男の人はそうなのかもしれないし、特に不満に思ったことも無いけど
彼を強引に誘って、「何月何日は何の日だから、これ買って。」と、わがままを言ったりもした。
去年の私の誕生日は、彼はイタリア、私はアメリカという長い距離を隔てて迎えた。
「お互い、仕事だから、しょうがないね。」
そう穏やかに言える彼が、頼もしくもあり、寂しくもあった。
ショコラのお店では、彼があまりにも入念に、私以外の女性へのバレンタインのお返しを
選ぶことに機嫌を損ねて、そのまま一人で帰ってしまったこともあった。
つい最近、ミシュランの一つ星をとったお蕎麦屋さんにも、行かなきゃねと
話していたけど、二人の毎日はそれぞれに忙しく、
もうしばらくの間、デートらしいデートをしていない。
何故か全てが過去形になる。
これからのことが、見えてこない。
私は、彼にとって、どういう存在なんだろう。
彼は、私にとって、どういう存在なんだろう。
いろいろなことを考えながら、雪の舞う六本木を7・8分歩く。
西麻布の交差点から少し脇に入ると、控えめな看板が見えてくる。
ゆっくりと扉を開ける。
そこはエンドスケープ、「最後に見た風景」という意味を持つ、二人にとって思い出のバー。
Posted by novelist at 01:00│Comments(4)
│PINOKO
この記事へのコメント
物語は佳境に入りだしましたね。
楽しみです
ところで素朴な疑問と言うか
物知らずな質問なんですが、
さやかさんはシャンパンを
シャンパーニュと言われてますが
シャンパンは本当はシャンパーニュ
と言うのが正式なんですか?
それとも意味があっての使い分け
なんでしょうか?
ワインは(も?)疎くて非常に
物知らずな質問だと思いますが
気になってしまって・・・
教えて頂けますか?
楽しみです
ところで素朴な疑問と言うか
物知らずな質問なんですが、
さやかさんはシャンパンを
シャンパーニュと言われてますが
シャンパンは本当はシャンパーニュ
と言うのが正式なんですか?
それとも意味があっての使い分け
なんでしょうか?
ワインは(も?)疎くて非常に
物知らずな質問だと思いますが
気になってしまって・・・
教えて頂けますか?
Posted by Moruco at 2008年05月03日 12:55
あっ 追伸です
シャンパーニュ地方で作られる発泡性ワインがシャンパンと呼ばれ事は知ってます(((^_^;)
シャンパーニュ地方で作られる発泡性ワインがシャンパンと呼ばれ事は知ってます(((^_^;)
Posted by Moruco at 2008年05月03日 13:00
>Moruco さま
レスがたいへん遅れてしまいまして、失礼いたしました。m(_ _;)m
いつもご覧いただき、ありがとうございます!励みにがんばります。
シャンパンとシャンパーニュについてですが、疑問に思われるのは当然かと思います。
日本ではシャンパンかシャンペンが一般的ですものね。
フランスでは、シャンパーニュと言いまして、正式かどうかといえばこれが正式だと思うのですが
日本ではどちらでもいいと思います。
ただ、さやかはちょっとだけ大人ぶりたくて、ちょっとだけワインが好きで、ちょっとだけワインの
ことを知っているので、あえて「シャンパーニュ」と言っているのだと思います。
つい先日、私の勤務しているお店でも、このことがミーティングで出まして、
やはりシャンパンのほうが親しみ深いのではという意見が多かったのですが
そこをあえて、「春のロゼ・シャンパーニュ・フェア」としたわけです。
お客様に尋ねていただけるのも、会話をさせていただくよい機会になればと。
今後とも、よろしくお見守りくださいませ。(^-^)/
レスがたいへん遅れてしまいまして、失礼いたしました。m(_ _;)m
いつもご覧いただき、ありがとうございます!励みにがんばります。
シャンパンとシャンパーニュについてですが、疑問に思われるのは当然かと思います。
日本ではシャンパンかシャンペンが一般的ですものね。
フランスでは、シャンパーニュと言いまして、正式かどうかといえばこれが正式だと思うのですが
日本ではどちらでもいいと思います。
ただ、さやかはちょっとだけ大人ぶりたくて、ちょっとだけワインが好きで、ちょっとだけワインの
ことを知っているので、あえて「シャンパーニュ」と言っているのだと思います。
つい先日、私の勤務しているお店でも、このことがミーティングで出まして、
やはりシャンパンのほうが親しみ深いのではという意見が多かったのですが
そこをあえて、「春のロゼ・シャンパーニュ・フェア」としたわけです。
お客様に尋ねていただけるのも、会話をさせていただくよい機会になればと。
今後とも、よろしくお見守りくださいませ。(^-^)/
Posted by PINOKO at 2008年05月09日 00:56
>Moruco さま その2
はい!ご存知だと思ってました。(^0^)/
ドミグラスかデミグラス、クリーム・ブリュレかクレーム・ブリュレ、みたいな違いと思って
大丈夫かと思われます!
個人的な想いからですと、シャンパンよりもシャンパーニュのほうが、言い放った後に
柔らかい余韻が残るような気がして、しかもちょっと色っぽい感じがして、気に入ってます。(^-^;)
はい!ご存知だと思ってました。(^0^)/
ドミグラスかデミグラス、クリーム・ブリュレかクレーム・ブリュレ、みたいな違いと思って
大丈夫かと思われます!
個人的な想いからですと、シャンパンよりもシャンパーニュのほうが、言い放った後に
柔らかい余韻が残るような気がして、しかもちょっと色っぽい感じがして、気に入ってます。(^-^;)
Posted by PINOKO at 2008年05月09日 00:59







